ドラマ制作の教科書?2020年12月24日 15:51

先週から今週に掛けて頭痛やら腰痛やらで体調を崩してしまい、今年最後の大事な行事にも参加することができなかった悔恨が、ずっと頭の中を巡っていた。ようやく、そこから立ち直れたのは、録り溜めしていた韓国ドラマの最終盤をまとめて見たせいかもしれない。
邦題が『恋愛体質』、副題に「30歳になれば大丈夫」と付いている。無料BSの放送なのでL字やスーパーによる番宣が度々入るのだが、それらをものともせず最後まで飽きずに観ることができた。韓国で歴代興行収入1位を記録した映画『エクストリーム・ジョブ』の監督イ・ビョンホンが手掛けた初めてのドラマである。
主人公はアラサーの女性3人。原題にある通り彼女らの“メロ”(멜로)を中心に描いた作品であるにもかかわらず惹きつけられた。一つには、ドラマ制作の裏側を描くことへの個人的関心を呼び起こすものだったからではあるが、それ以上に非常に良く考えられたドラマだった。
主人公3人の中心になるのが、若手脚本家という設定であるため、全編に渡って台詞の仕掛けが散りばめられている。それは執筆シーンに限らず、多くの場面があたかもドラマはこうやって書くのだというモデルケースになっていることと通じる。中には先行ドラマのパロディもたくさんあったようだが、演技進行の先が読める、つまり期待通りの演出でしっかり笑いがとれるだけの巧みな計算と軽妙なリズムが溢れている。だから、“ツボ”にはまるのだ。私は恋愛ドラマをあまり観ない口だが、韓国らしい“付き合い(사귀기)”の風儀が見事に描かれていると感じた。もちろん、それらを取り巻く背景の話題も選び抜かれたもので、この時代を様々に切り取って見せた手腕に驚かされた。出演者がそれぞれに輝いている。
『ハン・ゴンジュ』のチョン・ウヒと『応答せよ1988』のアン・ジェホンの遣り取りも素晴らしかった。現代的な“文化・習俗”を再現させるために絶妙に作り込まれた台詞を、いかに自然なものとして演技に定着させるのかはとても難しかったはずだが、違和感を感じるところがほとんどなかった。監督の細かな演出指導もあっただろうが、本来の“俳優(わざおぎ)”という言葉に相応しい。
少し、褒めすぎかも知れないが、この監督の次作を是非観たいと考えている。
*身体と切り離された刹那的な言葉ばかりの“お笑い”に比して、はるかに楽しめるドラマです。お勧めします。

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