いまはむかし、むかしはいま2023年03月04日 19:02

大倉山ドキュメンタリー映画祭が4年ぶりに開催されるにあたり、多くのニュース媒体に紹介記事が掲載され始めました。今回、映画祭当日を含め私自身はほとんど関わらないで来たので上映作品は未見のものばかりですが、その中であまり取り上げられていませんが、伊勢監督の新作『いまはむかし - 父・ジャワ・幻のフィルム』はジャック&ベティへ観に行ったこともあり強く印象に残っています。それは、日本という国を外から見た視点がそこにあるからです。留学生の日本語学習を支援するボランティアを始めて、何よりそのことがとても大切なものであることを知りました。ご覧になっていない方には是非お勧めします。

きなくさい時代の送辞2023年03月04日 19:03

録画デッキの記録可能時間が減ってきたので、少し増やそうと古い番組を消去・整理しているうちに、つい見てしまうことがよくあります。今日もまた、同じ番組にひっかかりました。それは、2013年に放送された大河ドラマ『八重の桜』第49回です。
 「再び戦を学ばず」という副題で12月8日に放送されたものですが、主人公の兄である山本覚馬(演:西島秀俊)が急逝した新島襄に代わり同志社の卒業式で訓示を述べるシーンです。
 この回のクライマックスであると同時に、シリーズ全体、いや歴代の大河ドラマの中でもひときわ印象に残る名シーンの一つに数えることができると思います。見返しているうちに、その台詞を書き出してみたくなりました。
 「諸君は学業を終え、これからそれぞれの仕事に就かれる。どうか弱いものを守る盾となって下さい。嘗(かつ)て私は会津藩士としてたたかい、京の町を焼き、故郷の会津を失いました。その償いの道は半ばです。今、世界が力を競い合い、日本は戦に向けて動き出した。どうか聖書の一節を心に深く刻んで下さい。その剣(つるぎ)を打ち替えて鋤(すき)と成し、その槍を打ち替えて釜と成し、国は国に向かいて剣を上げず、二度と再び戦うことを学ばない。諸君は一国の、いや世界の良心であって下さい。いかなる力にも、その知恵で抗(あらが)い、道を切り開いて下さい。それが、身をもって戦を知る私の願いです」
 卒業シーズンとなりました。今年の卒業式にはどのような言葉が贈られるのでしょうか。

空語にまみれた政治2023年03月30日 19:14

まもなく、統一地方選挙の投票日が来ますが、カルトまみれの政権与党がしゃもじ外交で支持率を回復する一方、共産党は党首公選を求めただけのヒラ党員を除名するという愚策に走りました。もう何も期待できないし、何も期待しないという構えで、それでも何とか投票所へだけは赴くことが習い性になっている昨今です。
 2012年末の衆議院選挙で自民党が大勝し、安倍政権が発足して以来、政財官の劣化はとどまることを知りません。“再委託”という中間搾取で儲ける強欲な〇通やら〇ソナのおかげで、“中抜き資本主義”そのものの崩壊も近いのではないかと思いますが、その後に来る半端でない悲惨な状況を今さらながら国民があえて選ぶというなら、それも仕方がありません。留学生には、それぞれの身の処し方を考えるよう伝えるのみです。
 知性のかけらも感じられない為政者に隷従するのが、この国の“かたち”であるなら、それをそのまま日本の実態として彼らには説明しましょう。
 韓国ドラマ『根の深い木』に印象的なシーンがあります。高麗からの易姓革命を主導した鄭道伝(チョン・ドジョン)が創始した秘密結社の首領に、朝鮮王朝第4代世宗がハングル創製の意義を説く場面です。世宗が新しい文字を作る理由の一つは、利権を欲しいままにして腐っていった世襲両班の士大夫たちを王に代わって牽制する役割を“民”が持つべきで、その為の文字が新たな世の始まりになると語ります。この遣り取りは、文字が持つ世論操作・情報操作の害悪が語られる最終話に引き継がれ、その正誤は未来の“民”に委ねられます。観た当時、原作を超えた見事なドラマ脚本に驚かされましたが、今それがとても身に沁みます。
 ちなみに、私が一番最初に観た韓国ドラマは「イ・サン」という史劇でした。朝鮮王朝第22代正祖の生涯を描いたこのドラマでヒロインを演じたのは韓国の女優韓志旼(한지민)、仮名で書けばハン・ジミンさんです。“反自民”の振り仮名と全く同じであることが、より一層、このドラマに惹かれた理由であるのを未だに疑ったことはありません。