玉砕の果て2021年07月31日 18:48

78年前の戦況は絶望的な後退戦を強いられていた。ソロモンからマーシャルへと転戦したにニミッツ率いるアメリカ軍を迎え撃つため、日本は「絶対国防圏」の拠点としたサイパンの近海マリアナ沖で戦うが、作ったばかりの大型空母を沈められるなど壊滅的な敗退を喫する。
 制海権を失ったサイパン島の日本軍は孤立し艦載機による空爆と艦砲射撃にさらされる。もう、奪還はおろか補給もままならない状態となった島は見捨てられた。司令官が「米鬼を索(もと)めて攻撃に前進、一人よく十人を斃し、持って全員玉砕せんとす」と発令し先に自決したため、守備隊は突撃、民間人は断崖から飛び降りて死地に赴く。米従軍記者が「目を覆わないではいられないような自殺手段」と称したバンザイ・クリフの悲劇を、本土の新聞は「従容 婦女子も自決 世界驚かす愛國の精華」と褒め称えた。
 それ以前から「サイパンは絶対安全」だと言い続けた首相東條は、陥落の一報を受けてこう漏らしたという。「ちょっと雨がかかった程度。まだ日本人の努力が足りない。これは天からの声だ」。その後、マリアナ諸島にはB29の発信基地が造られ、原爆投下へと繫がる本土空襲が始まる。

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