同じ分裂反応か?2021年07月17日 12:27

IOCの会長だかなんだか良く知らないが、偉大な音楽家と同じ名前らしい人物が昨日広島を訪れ「平和に貢献したい」と述べたという。7月16日と言えば、76年前にアメリカのニューメキシコ州で原子爆弾による核爆発実験が行われたその日である。以後、広島・長崎に落とした2発を含め、人類が何度でも滅亡するほどの数の核兵器が分裂反応のように世界中へ拡がった。
 折しも、“デルタ株”を初めとする新型コロナウィルスの変異種が世界中を席巻している時なので、上記発言は、あたかも核分裂反応のように次々と連鎖していく感染の拡大に「貢献したい」という意味かと誤読した。そういえば、今準備が進められている“強者(驕奢?)”スポーツ大会は、全電源喪失を軽視した原発事故による放射能の“拡散”被害を含む震災の復興を目指していたのではなかっただろうか。
 ここにも歴史から何も学ばない事例を見る。

繰り返し読む詞章2021年07月17日 12:28

過日オンラインで鑑賞した新作能『沖宮(おきのみや)』公演は、後日アーカイブを字幕付きで視ることができたので、その詞章全文を“打写”(キーボードで打って写)し、その後、何度か繰り返し読み直している。石牟礼道子と言えば『苦界浄土』や『椿の海の記』が有名で、水俣湾をめぐる山海の見事な自然描写がすぐに思い出されるが、能『沖宮』は島原の原城跡が舞台だ。ただ、天草四郎を初めとするキリシタンや、子方が演じる雨乞いの人柱“あや”の出身である天草下島の印象も強い。それは、島の西方に大きく拡がる大海(東シナ海)が海の“億土”のように思えるからでもある。
 “あや”が身につける緋色の装束は、天草下島の女房たちが一針ごとに涙を流して縫ったもので、そこには虐殺された近親者に向けた鎮魂もあるし、あるいは流された血の色にも似るが、やはり、西方遙かに竜神・竜女が住む沖の宮へとたなびく緋色の雲を連想してしまう。
 そして、その明かりは衆生が住む常世に向けられた一灯なのかもしれないと考えている。いつか『春の城』を読んで見たい。