ブラックボックスな社会2017年10月25日 00:58

 東京新聞に変えて以来、紙面で時々その名を目にしていたが、昨夏時宜にかなった武器輸出に関する新書本を出したことでも注目していた望月衣塑子記者が、今年は菅官房長官への切れ味鋭い質問で目立ったせいか、様々な誹謗・中傷にさらされていると聞く。
 その望月さんのツイートが、ネットでリツイートされているのを見つけた。アカウントも持っていない私は、時々アクセスする特定のTLを流し読むぐらいなのだが、リツイートされた彼女の記事、正確に言えばそのリンク先に興味を引かれた。それは日本外国特派員協会(FCCJ)が、元TBSワシントン支局長の山口氏にレイプされたとする伊藤詩織さんの記者会見を行ったというものだ。その様子を全編動画で見た。1時間を超える英語通訳込みの会見だったが、今の日本の報道に関する多くの示唆を得ることができた。
 会見の前半は彼女が書いた新刊本の内容をかいつまんで説明したものだったが、いくつか印象的な言葉がある。ひとつは“スティグマ”。ある事件の犠牲者あるいは被害者側が、世の中の無責任な言説で汚名を着せられるということ。もうひとつは“示談”。警察は当初から示談による解決を被害者側へ執拗に持ちかけていたそうだ。それは、成田空港での逮捕中止、刑事部長の沈黙、検察の不起訴、審査会の不起訴相当の議決という、その後に起きた不可解な一連の対応を並べた時、政治的な判断を疑わせるに足るものである。
 だから、詩織さんは著書に“ブラックボックス”と名付けたそうだ。望月記者がこの動画を自分のTLにリンクしてツイートしたのは、その“ブラックボックス”と名付けられた「内務機関」そのものの姿を日々実感していると同時に、同様の問題が自らも属する「報道」にもあって、そこから目を外すわけにはいかないと考えているからに違いない。ただ、私としては、匿名による被害者や記者への誹謗・中傷もまた、今という時代を現している“ブラックボックス”の一つだと思う。この“事件”はまだ始まったばかりだ。声を挙げている人がいる限り続くだろう。

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