多様から遠のく日本人2017年10月23日 00:56

 昨日はぐっすり眠れた。
 ネットも含め選挙報道そのものには全く関心がなかったので、久しぶりに佐々木倫子の漫画『チャンネルはそのまま!』を読み直しつつ、一昨日何気なしに録画しておいた「世界ふしぎ発見」を飛ばし飛ばし見た。
 昔は時々見ていた記憶があるが、今でも構成はほとんど変わっていない。おそるべき長寿番組の一つだ。今回取り上げられたのはカナダのバンクーバー。その郊外にあるソルトスプリング島は、移民で成り立っているカナダを象徴するような社会環境で、多言語多民族が交錯しながらも何事もないように日々の暮らしが進んでいるように見えた。
 驚いたのは、その地域通貨の最高額100ドル紙幣に日本人の肖像が載っていたことだ。キミコ・ムラカミ。この島で生まれ、幼少期を日本で過ごす。その後カナダに戻って移民の日本人と結婚し家庭を持つものの、大戦時に強制収容所に隔離され財産を没収される。戦後、収容所から解放され、故郷に戻って一から荒れ地を開墾したのがソルトスプリング島だった。その経験が後に多くの移民の相談にのる精神的土壌になって、尊敬を受けるまでになった。
 取材映像には日本語が達者なイタリア人も出てきて、地域の日本語教室を彷彿とさせるものがあった。バンクーバーの規模と比ぶべくもないが、多様であることが寛容や助け合いを生む可能性を感じさせるところは共通している。市民が集まる市場も多様だったが、それはそれぞれに意味があると感じられるからで、たとえば家電量販店のスマホケース売り場のような一つの目的のために大量に用意されたコピーが並ぶ異様な世界とは異なる。
 今回の選挙で投票しなかった有権者が、あの選ばれないで棄てられる運命にある大量のスマホケースに見えて仕方がないのは、あの「ブレードランナー」のレプリカントを連想するからだろうか。あるいは「わたしを離さないで」の提供者か。もちろん、そうした彼らと共生することも多様な社会そのものではある。

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