師匠が生み出した謙虚さ2022年02月14日 21:48

将棋の棋士藤井聡太さんが最年少五冠を獲得したことを、TBS報道特集の最新ニュースが採り上げていました。続報によれば今回の記録達成をあの羽生さんが「驚嘆すべき」と評しているそうです。一方で、現役のタイトルホルダーを相手の完勝とも言える成果にも、若者は「まだ頂上が見えない」という謙虚なコメントで応えています。
 ここ数年、ネット上に公開されている将棋の棋譜を私も時々読んでみることがあります。そこには、藤井青年の活躍でAIが指し示す最良の手順に人間がどこまで近づけるのかという新しい次元の戦法が生まれていることを感じるのです。
 ただ、同時に私が面白いと考えていることは、その専門技術的な話題から少し外れたところにあります。それはかの青年の師匠にあたる杉本八段の存在です。年若い異様な才能の弟子と出会ってしまった彼は、この類い希な“天才”をどのように育てたら良いのかを深く考えたのではないでしょうか。
 たとえば、対局中の昼食や“おやつ”のメニューを当てるといった勝負とは直接関係のない話題に対し、この師匠は積極的に取材を受けてきたきらいがあります(間接的に聞いただけですが…)。つまり、できるだけ弟子が対局そのものに集中できるように、いわば取材の“露払い”を自ら進んで行っています。もちろん、自身も棋士として活躍する気持ちはあるでしょうが、それ以上に“驚嘆すべき”快挙を成し遂げそうな弟子を、この情報過多の時代からどうやって守るかについて、より腐心しているように思えます。
 弟子の謙虚さは、この師匠の腐心を間近に感じるところから来ていることなのでしょう。

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