多田富雄と能2021年12月09日 21:27

天籟能のワークショップ第6回にオンラインで参加した。今日の内容は『望恨歌』原作者である免疫学者多田富雄の思想について。前半がドミニク・チェン氏と安田さんの対談。後半が同人3人と加藤眞悟師・坪井美香氏による朗読という構成である。
 対談では、免疫という“システム”が、自己と“非”自己の関係をどのように認識・制御して生命進化の“多様性”を担ってきたかを「超(スーパー)システム」と名付けて解き明かそうとした多田富雄の著作(『免疫の意味論』・『生命の意味論』)を中心に、遺伝や言語における翻訳の相似性、“能”という芸能における身体変容を促す技法、心の身体化が自律へとつながる仕組みなど、多岐にわたる話題が採り上げられ、“わかりにくい”ことに触れる楽しさが多く語られた。
 一方、朗読の内容は、多田富雄晩年の著作『寡黙なる巨人』に含まれる文章と詩や、社会に向けて発せられた「詩」などを、安田さんが大胆に再構成したもので、自分自身やメディアを含む社会現象に多田富雄がどのように向き合ってきたかを強く感じさせるものだった。自らが構想した「超システム」を自身の苛酷な体験の中に照応させ新しく習い覚えたパソコンで書き残した文章や詩は、『望恨歌』などを含む新作能を作った経験の確かな延長線上にあるように思える。
 とても充実した時間だった。

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