点を綴る2020年11月24日 15:03

二つ隣の駅、妙蓮寺に通い出して1年半ぐらいになる。元々は「本屋Bar」という小さな企画から始まって、昨年来の本格的な「リノベーションプロジェクト」で見違えるようになった「本屋・生活綴方」に行くためである。その間、本店の2階で開かれる一連のイベントなどにも顔を出しているうちに、段々と馴染みの常連客のようになっていった。もしかしたら、本に酔う為に訪れているのかもしれない。
その街の本屋から、このたび“ZINE(ジン)”と呼ばれるタイプの小冊子が発行された。名前を「点綴(てんてい)」という。最後のページにこう解説されている。「点を打ったように、ほどよく散らばっていること。ばらばらのものを綴り合わせること」
誰の命名かは知らないが、この本屋の特徴を良く表しているし、できあがったZINEもそう名付けるほかないような仕上がりになっている。冒頭の「開店前史」から最後の「編集後記に代えて」まで、この街の本屋に関わる監修から店番の人々の、それぞれ思うところが、微妙な熱量の違いを匂わせながら、付いたり離れたりして漂っているように見える。
おそらく、これから先にこの本屋がどのような場として続くのか、あるいは変わるのかはまだ誰にもわからないが、“点”が綴られていくというカタチだけはある種の有機物のように緩やかに生き続けてゆくのだろう。それは次期店長が監修者を評した次の言葉が端的に表している。「とても忙しいのだと思うが、忙しそうにしない。誰との話も常に聞く準備がいつも整ってますよ、という態度で聞いてくれる」
若者がこの本屋に惹かれていく理由がそこにあると共に、私は、執筆者それぞれの名前(本名)に、おそらくは本好きの両親が付けたであろう素朴な共通点を見いだしている。あらかじめ本に綴られてゆく運命を持っていたよう