いつのまにか異常になる世界2020年03月10日 09:06

 昨日は録画しておいた映画の鑑賞。少し前に放映されたスピルバーグの『シンドラーのリスト』を視聴した。3時間15分という長丁場だが、日本での封切り時に映画館へ観に行った記憶がある。ナチスドイツに占領されたポーランドのクラクフで、労働力として雇い入れたユダヤ人を軍事工場に必要な“職工”であると守り抜いた実業家オスカー・シンドラーを描いている。もう四半世紀も前の作品だ。歴史的な事実を元にしていることを強調するようなドキュメンタリー調のモノクロ映像だが、ほんの2シーンだけ少女の服が赤く染められている。
 脚本・撮影の完成度が高いせいかあまり長さを感じさせない。その中で二つの対話シーンが印象的だった。
 一つはナチスの将校アーモン・ゲートが収容所のユダヤ人を小銃で狙い撃ちしていたバルコニーでの夜。

 ゲート「君を 見てるが 決して酔わない。 驚くべき 自制心だ。 自制心は力。 パワーだ。」
 シンドラー「ユダヤ人はそれを恐れるのか?」
 ゲート「我々の“殺す力”を恐れてるのさ。」
 シンドラー「そう。 “理由なく殺す力”をね。 犯罪者を死刑に処すと気分がスッキリする。 自分で殺せば更に気分がいい。 それは“力”じゃない。 それは“正義”で“力”とは別のものだ。 力とは。 人を殺す正当な理由がある時に殺さないことだ。
 ゲート「それが力?」

 もう一つが、映画の題名にもなったリストを作成する前夜のシーン。アウシュビッツへの移送が決まった直後のユダヤ人会計士イザック・シュターンとの対話。

 シンドラー「聞いたか?」
 シュターン「ええ。 これが閉鎖命令です。 皆を送り出し私は最後の汽車で…」
 シンドラー「それを言うな。 ゲートに よく頼んでおいた。 君に特別待遇を与えるように。」
 シュターン「あそこの“特別待遇”には 恐ろしい意味があるそうです。」
 シンドラー「じゃ“優先待遇”と。 新語が必要だ。」
 シュターン「まったく」

 異常な世界は突然現れるものではなくて、いつのまにか日常の中に入り込んでくる。そこに気が付かなければ同じようなことは繰り返されるだろう。イスラエル建国以降のパレスチナ人の虐殺はそのことを良く表している。

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