モンスーン ― 2020年03月05日 14:22

昨日から断続的に小説を読んでいた。韓国の作家ピョン・ヘヨン氏の作品をまとめた『モンスーン』という短編集である。昨年11月に買い求めたものの読み始めることなく放置していたが、ようやく手に取ることができた。彫刻家中谷ミチコさんの作品「あの山にカラスがいる」をあしらった表紙が印象的で、今にも飛び出しそうなカラス達がこの短編集で描かれる都会の“孤独”を際立たせている。小説の主人公達はどこにでもいそうな人々で、それぞれに周りの人間関係を微妙に忌避しているが、いつのまにか望ましくない他人と関わらざるを得ない状況へ追いやられてゆく。そのじわじわと染み込んでくるような怖さが、人間存在の本質的な“孤”につながっていると感じられる。それぞれの短編は、本質的な解決を見せないままに終わる。だから、すぐに続けては読めないのだ。大学路あたりで不条理劇として上演されてもおかしくない。そんな気がする。日本語訳は姜信子さん。
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