穂高の星々を観る ― 2018年08月21日 13:16
ある故人を追悼する映画会に参加した。宮田八郎さんという。企画した伊勢真一監督はハッチャンと呼ぶ。北アルプス穂高岳山荘の前支配人だった。この春に南伊豆の海難事故で亡くなる直前まで星空を撮影していたという。大倉山ドキュメンタリー映画祭にも良く顔を出していたそうだ。その面影がかすかに記憶に残るだけで、直接声を交わしたことがない私には昨日まで遠い人だった。
その宮田さんが映像プロダクションを作り、『穂高をゆく』と題して北アルプスの山々を映像作品にしていた。映画会ではその中から3本の短編をまとめたものと遺作になった『星々の記憶』、そして宮田さんが伊勢さんに声を掛けたことで生まれた伊勢監督の『小屋番』が上映された。
本格的な登山とは全く縁がなく過ごしてきた私には、宮田さんが撮った映像全てが新鮮だ。いわゆる「百名山」などをテレビで紹介する番組とは肌触りが少し違う。何というか、対象への“愛”があるような気がする。字幕の言葉や音楽も含め、全体がとてもロマンティックである。やや面映ゆいと思われるほどの“のめり込み”も、彼を良く知る人にとってはスクリーンを通した故人の声に聞こえることだろう。
もちろん、その撮影作業そのものは過酷なものである。登る人を撮る時にどのような位置取りをするかということだけでも高所恐怖症の私は考えたくない。だから、どうしてもレンズを覗く想いが強くなるのだろう。短編を続けて観ていて“しんどい”なと思うこともあった。それが最後の『星々の記憶』で少し変わった気がする。自分の来し方に想いを寄せるような字幕が入り、明らかに内省的な物語を語ろうとしている気配があった。それだけに、変わりつつある映像制作の道半ばに逝ってしまったようにも感じた。
全体は途中休憩を挟みながら5時間30分という長丁場だったが、多くの人が上映後の話し合いまで残っていた。マイクが回って参加者全てが語り、なかには感極まる人もいた。宮田さんを直接知らない人も含め、その感想から人となりが浮かび上がるようだった。最後に奥さんから追悼上映会への感謝の言葉もあったが、後を継ぐかもしれない四人の娘さんの笑顔がとても印象的だった。