平凡な“悪”の行き先2019年10月05日 18:24

香港で「緊急状況規則条例」による「覆面禁止法」なる行政立法が成立したという。その対象に、至近距離から拳銃を発射するフルヘルメットの“暴徒”らは含まれていないようだ。街中でマスクをしているだけで身元確認が行われるならば、それはもう戒厳令に等しい。
 日本ではヘイトデモを守る警察官の行列の隣で、反対行動をとる市民を公安関係者がカメラで無断撮影して威圧している段階だが、路上の演説に野次を飛ばしただけで拘束される事例はすでに多く見られる。
 憲法改定(“改正”という言葉は欺瞞に満ちている)で検討されている「緊急事態条項」が成立すれば、現在の香港の状況が現前することになる。いや、反対する“わずか”な市民の声は、政府に隷属する多くの国民から遠ざけられて、あたかも何もなかったかのように多くのマスコミは粛々と無視するだろう。
 インターネットが使えなければ(その可能性はゼロではない)、光州事件の実態を描いた映画『タクシー運転手』のように外国人記者が世界に発信するまで知られることなく終わるかもしれない。
 伊藤詩織さんのレイプ事件にしても、池袋の暴走運転にしても、松山の誤認逮捕にしても、東電幹部の無罪にしても、関電の賄賂にしても、利権や権力につながることで免罪される権威主義的支配構造があたりまえのような社会になっている。警察や司法が“権威”の手先になっているような状況があっても、テレビは未だにのんきな刑事ドラマを作り続けているのではないのだろうか。罪の無い人間をおとしいれるどころか、拳銃を発射して人を殺しても権力の言うことさえ聞けば免罪される時代まであと一歩だ。罪を問われなければ、“普通”の人がいくらでも残忍になれることは、先の戦争での数々の証言が認めている。そういう社会の到来を、為政者を選ぶための投票に行かないこの国の多くの人たちは本当に待ち望んでいるのだろうか。

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