追悼しない組合とは?2016年10月28日 21:25

 大手広告会社の電通で過労死が“繰り返された”ことを聞いた時、労働組合は一体何をしていたのだろうかという素朴な疑問が湧いた。もちろん電通にも労働組合はある。連合の単産である広告労協に企業内組合として加盟している。また、広告労協はメディア関連企業の組合が集まった「日本マスコミ文化情報労組会議」(MIC)という組織の一員でもある。

 そこで何気なくそれぞれのWebページをのぞいてみた。広告労協の「News&Topics」では2014年春闘のベースアップに関する見解が、MICでは沖縄・高江における記者拘束に関する声明が、それぞれ最新のトピックだった。先述の過労死問題に関連して、労働条件のあり方について公開するような見解なり声明なりが、ここにあるべき必要はないのかもしれない。

 ただ私が思うのは、故人への一片の追悼メッセージもそこにはないということが、とても淋しいなということだ。関係者として一言あって欲しいというのは他人の身勝手かもしれないが…。

 自殺率そのものは高止まりの傾向を示しているものの、若年層の死因における自殺の比率は先進諸国で抜きんでていると聞く。

 いわゆる“いじめ”も含めてハラスメントの蔓延を防ぐには、亡くなった“個人”への追悼を公にするところから問題解決の道を探るしかないのではと考える。

 今年亡くなった永六輔が書いた「上を向いて歩こう」は、60年安保闘争の渦中で死亡した樺美智子さんに象徴されるような無念さを鎮魂歌にしたものだという。この歌を多くの若い故人に向けて歌わないですむような世の中を目指したものだったのだろう。