正解の無い問いへの声 ― 2022年12月11日 23:49
毎土曜のTBS「報道特集」以外、リアルタイムでテレビを観る習慣が無くなっているせいか、録画番組の再生の合間に一瞬映る情報バラエティ系の番組内で裏返った大声で語るテレビタレントに、強い忌避感があります。
一方で、対面で行っている日本語レッスンの中に、時々はっと気付かされる貴重な声を感じることがあります。1年半近く、1対1で進めてきた人間関係に、新しく加わった二人目の学習者の存在がとても大きな変化を促しています。それは、たとえば休憩中にボランティアが席をはずしている時間の二人の様子にも見て取れます。国は違っても、それぞれ母国から離れて日本で暮らしている同世代として、お互いの関心にもとづく対話が自然に生まれています。その柔らかな声の交換にほっとします。
また、作文の添削例を説明しているときに起きる率直な疑問の声も貴重です。それはつぶやきにも似た小さな声なので、難聴気味の私は思わず耳を近づけて聞き取ろうとします。ある時は恥ずかしそうに、ある時は真っ直ぐに向かってくる外国人の日本語には、自分自身も失っていたかもしれない”問い”への響きを感じるのです。
能楽師の安田さんがTwitterに書いていたことですが、学校の子どもたちは「正解のある問い」には大声で答え、「正解のない問い」には“ぼそっ”と応えるそうです。それを聞き逃さないのが大変だといいます。「正解のない問い」に向き合う混迷の時代に、言葉を考える貴重な時間を過ごしていることを実感しています。
一方で、対面で行っている日本語レッスンの中に、時々はっと気付かされる貴重な声を感じることがあります。1年半近く、1対1で進めてきた人間関係に、新しく加わった二人目の学習者の存在がとても大きな変化を促しています。それは、たとえば休憩中にボランティアが席をはずしている時間の二人の様子にも見て取れます。国は違っても、それぞれ母国から離れて日本で暮らしている同世代として、お互いの関心にもとづく対話が自然に生まれています。その柔らかな声の交換にほっとします。
また、作文の添削例を説明しているときに起きる率直な疑問の声も貴重です。それはつぶやきにも似た小さな声なので、難聴気味の私は思わず耳を近づけて聞き取ろうとします。ある時は恥ずかしそうに、ある時は真っ直ぐに向かってくる外国人の日本語には、自分自身も失っていたかもしれない”問い”への響きを感じるのです。
能楽師の安田さんがTwitterに書いていたことですが、学校の子どもたちは「正解のある問い」には大声で答え、「正解のない問い」には“ぼそっ”と応えるそうです。それを聞き逃さないのが大変だといいます。「正解のない問い」に向き合う混迷の時代に、言葉を考える貴重な時間を過ごしていることを実感しています。
自らを見直すことになる手直し ― 2022年11月29日 23:46
地元の日本語教室で担当している学習者の作文を添削し始めて1年半ほどになります。日本語教師のように体系だった知識の持ち合わせのない私は“ただのネイティブ”なので、できたものはあくまでも「一つの例」として示しますが、それでも、一緒に考えながら対話を重ねていく中で、学習者の作文が段々と上達していく様子を見るのは嬉しいかぎりです。
9月後半から加わったもう一人の学習者にも勧めたところ、同じレッスン仲間に刺激を受けたのか、当初は会話だけを希望していた人が、少しずつ書き始めるようになりました。
作文は事前にメールで送ってもらい、前日ぐらいまでに添削して送り返します。それぞれが、身近な話題から社会的な問題まで、外国語で表現する難しさを感じながら取り組んでいます。その時に、私が意識するのは一人称です。自分はどう考えるのかという自身の考えや想いをどのような字句や語彙によって表現するのかを、学習者と確認し直しながら検討します。
同時にそれは、一日本人としての自分を見直す場でもあります。彼女らの作文にはくだらない技巧はありません。真摯な言葉が並びます。だからこそ添削は難しい。
現政権の閣僚が棒読みする詭弁や、“有識者”とやらが出すお手盛りの言葉などとは対極にあります。その落差に呆然とする日々です。
9月後半から加わったもう一人の学習者にも勧めたところ、同じレッスン仲間に刺激を受けたのか、当初は会話だけを希望していた人が、少しずつ書き始めるようになりました。
作文は事前にメールで送ってもらい、前日ぐらいまでに添削して送り返します。それぞれが、身近な話題から社会的な問題まで、外国語で表現する難しさを感じながら取り組んでいます。その時に、私が意識するのは一人称です。自分はどう考えるのかという自身の考えや想いをどのような字句や語彙によって表現するのかを、学習者と確認し直しながら検討します。
同時にそれは、一日本人としての自分を見直す場でもあります。彼女らの作文にはくだらない技巧はありません。真摯な言葉が並びます。だからこそ添削は難しい。
現政権の閣僚が棒読みする詭弁や、“有識者”とやらが出すお手盛りの言葉などとは対極にあります。その落差に呆然とする日々です。
綺麗な言葉の交換 ― 2022年10月16日 23:35
地元の日本語教室が対面に戻って1ヶ月。担当する学習者も2名となり和気あいあいとした雰囲気になってきました。ところが過日、換気の関係で開けてある窓の隙間から吹き込んでくる寒風のせいで、みんなが少しばかり寒い思いをしました。とりあえず閉めてレッスンを継続しましたが、次週以降は“適度な”換気に気を付けようと考え、そのことを、次回読む簡単な読み物と一緒にメールで伝えたところ、“先生”こそ健康に気を付けてと逆に励まされてしまいました。
韓国語を学び始めた頃、講師から教えてもらった言葉を思い出します。「가는 말이 고와야 오는 말도 곱다」(行く言葉が美しければ、来る言葉も美しい)。匿名の陰に隠れてネットで飛び交わされるきたない日本語より、外国人学習者の方がはるかにきれいな日本語を使います。それを知ることが、日本語学習支援という国際的なボランティアにおける最大の収穫です。
韓国語を学び始めた頃、講師から教えてもらった言葉を思い出します。「가는 말이 고와야 오는 말도 곱다」(行く言葉が美しければ、来る言葉も美しい)。匿名の陰に隠れてネットで飛び交わされるきたない日本語より、外国人学習者の方がはるかにきれいな日本語を使います。それを知ることが、日本語学習支援という国際的なボランティアにおける最大の収穫です。
不可欠になる民際交流 ― 2022年10月01日 23:24
今週、何やら政府を挙げての大掛かりなイベントが行われたようですが、普段からテレビは録画した番組しか観ないもので、その様子は翌日の新聞とネットで確かめる習慣が身に付いています。それらによれば、G7首脳を始め招待した客の4割は来場せず、いかめしい式次第とお似合いの母国で暴政を続けるミャンマー国軍にお墨付きを与える大いなる茶番劇だったと聞きます。
一方で、身近な生活習慣の一部である外国人への日本語学習支援は楽しく続いています。日中国交正常化50周年の記念日を挟んで、火曜日はこの1年間オンラインで毎週顔を合わせた留学生と初めて対面で会い、木曜日は地元の日本語教室で2年近く続いている学習者と一緒に新しい学習者を迎え、今日は大学院への入学を目指している日本語学校生と様々な対話を行いました。
日本での就活が忙しくて支援が中断している学部生を含め、今、訪日している外国人留学生の多くが中国から来ています。日本の総人口より多い彼の国のZ世代は世界の様々な所に活躍の場を求めており、語学の習得もその一環ですが、それぞれに強い自律心を持っていて、わからないことがあればすぐ尋ねてきますので、こちらも勉強が欠かせません。他にも月2回、韓国系カナダ人との特別レッスンもオンラインで始めました。
今までにない忙しさの中、こうした外国人との交流が、これから先のこの国の行く末に必要不可欠なつながりになってゆく予感がしています。
一方で、身近な生活習慣の一部である外国人への日本語学習支援は楽しく続いています。日中国交正常化50周年の記念日を挟んで、火曜日はこの1年間オンラインで毎週顔を合わせた留学生と初めて対面で会い、木曜日は地元の日本語教室で2年近く続いている学習者と一緒に新しい学習者を迎え、今日は大学院への入学を目指している日本語学校生と様々な対話を行いました。
日本での就活が忙しくて支援が中断している学部生を含め、今、訪日している外国人留学生の多くが中国から来ています。日本の総人口より多い彼の国のZ世代は世界の様々な所に活躍の場を求めており、語学の習得もその一環ですが、それぞれに強い自律心を持っていて、わからないことがあればすぐ尋ねてきますので、こちらも勉強が欠かせません。他にも月2回、韓国系カナダ人との特別レッスンもオンラインで始めました。
今までにない忙しさの中、こうした外国人との交流が、これから先のこの国の行く末に必要不可欠なつながりになってゆく予感がしています。
留学生に示す日本語 ― 2022年07月27日 22:59
コロナ禍でも少しずつ留学生は入国しています。RKK(「留学生と語り合う会」)で日本語学習を支援する留学生はほとんどが大学院生なので、秋の日本語学校卒業や大学院修了を迎え、この時期に担当する学習者が変わることもよくあります。
現在チューターとして関わっている院生が秋に日本での就職が決まったのと入れ替わりに、大学院進学を目指している日本語学校生を担当することになりました。専攻は「メディア」だそうですが、近頃は「メディア」と言っても非常に幅広い分野をカバーするので、マスコミ・広報から経営コンサルやITなどネット関連の事業のほとんどが含まれるようです。
実は、近年困っていることの一つに、NHKや大手紙を中心としたWeb上のニュース記事の品質低下があります。学術論文ではありませんから厳密な論理構成は不要ですが、そもそも事実を検証するような態度が感じられず、助詞の間違いなど日本語としても不適切な表現さえ時々見かけます。専門用語を使うこと自体には何の問題もありませんが、ネット慣れしたような言い回しや、時に“忖度”したような端切れの悪い言葉遣いが目立ちます。
確かな視点で報道に携わる記者や、権威におもねないコラムニストの論理的な文章を、オンラインレッスンの生教材として使うためには、そろそろ有料コンテンツも避けられないのかもしれません。
現在チューターとして関わっている院生が秋に日本での就職が決まったのと入れ替わりに、大学院進学を目指している日本語学校生を担当することになりました。専攻は「メディア」だそうですが、近頃は「メディア」と言っても非常に幅広い分野をカバーするので、マスコミ・広報から経営コンサルやITなどネット関連の事業のほとんどが含まれるようです。
実は、近年困っていることの一つに、NHKや大手紙を中心としたWeb上のニュース記事の品質低下があります。学術論文ではありませんから厳密な論理構成は不要ですが、そもそも事実を検証するような態度が感じられず、助詞の間違いなど日本語としても不適切な表現さえ時々見かけます。専門用語を使うこと自体には何の問題もありませんが、ネット慣れしたような言い回しや、時に“忖度”したような端切れの悪い言葉遣いが目立ちます。
確かな視点で報道に携わる記者や、権威におもねないコラムニストの論理的な文章を、オンラインレッスンの生教材として使うためには、そろそろ有料コンテンツも避けられないのかもしれません。