選ばれないもの2021年04月02日 18:49

この4月、観たい韓国ドラマが見当たらない。つい先日終わった『ブラックドッグ』がなかなか良かっただけに余計寂しい。気を取り直して、しばらく休んでいた韓国語の勉強でもしようかと考えている。
 実は、前出のドラマは“新米教師コ・ハヌル”という副題が付いていた。主人公は塾講師を長く務めた女性であって臨時採用試験の模擬授業でも入試情報に基づいた現実的な説明をするぐらいだから、“新米”という日本語が適当だとは思えない。それ以上に違和感を覚えるのは、このドラマが、教師にもある“非正規職”という現実の社会問題を細かく描いたものだからだ。“コ・ハヌル(고하늘)”は直訳すれば「高い空」。「坂の上の雲」にはならないが、高みを目指す女性を取り巻く現実を描いた物語と深読みしてもおかしくはないだろう。
 学校教師という、時には深い人間関係をかたちづくる可能性もあるような仕事であっても、継続的な雇用が保証されない。「SDGs」のマークが社会のあらゆる場に喧伝されていることとは真逆な実態が隣国にもあるのだ。この国でも、数日前まで求職者の相談にのっていた人が失業するというエイプリル・フールかと笑えない現実がある。そうした不安定な社会にコロナ禍が影を重ねている中で、正面から向き合おうとしたドラマだと言えるのかもしれない。
 主演のソ・ヒョンジンは今回初めて観た。ベテラン女優らしいが初々しさを良く出している。『応答せよ1988』のラ・ミランなど共演者もうまい。だから、余計に次を期待してしまうのだろう。そろそろ、Netflixを申し込むべきだろうか。