虚無とのたたかい2021年05月27日 11:48

『ゲド戦記』を引き続き読んでいる。第2巻は因習などに囚われた自己像からの解放を描きながら、秩序を取り戻す物語。第3巻は蔓延(まんえん)する虚無からどのように立ち戻るかを探す為に、最果ての島を訪ね行く物語。ゲドの言葉「ろうそくのあかりが見たいなら、そのろうそくを暗いところに持って行かねば」がアレンに響く。短い後日談で一度締めくくられた物語は、その後20年近い時を経て新たに書き継がれた。
 コロナ禍が一つのきっかけとなり、この世界の“均衡”はもろくも崩れ去っていることが露(あら)わになった。今こそ読まれるべき文学のように感じる。