タレスケの独り言

イラストレーターの和田誠が亡くなった。20代の前半、『ぴあ』を片手に映画館通いをしていた日々に、この人の『お楽しみはこれからだ』が随分と後押ししてくれた思いがある。どこかへ出してしまったようで、もう手元には無いが、卓越した選択眼とあの線画は忘れられない。横浜の田舎で育った私にも、洋画に現れる華麗な世界で交わされる会話を絶妙な日本語訳で記憶させてくれた人だった。
　その後も、井上ひさし・村上春樹・ヴォネガットなど名だたる作家の著書カバーを始めとする多彩な仕事を、折に触れて目にすることが多かっただけに、何だか信じられない思いがある。行ったことはないが、松山の伊丹十三記念館のように、その生前の八面六臂の活躍を展示する場所があったらと思うクリエーターの一人であることは間違いない。合掌。