半島を描かなかった司馬遼太郎 ― 2025年01月11日 16:55
NHKがBS放送波を削減して1年が経ちました。既にテレビを日常的に観なくなって久しく、録画して観るわずかな番組が統合された後に残ったこともあり、特段不便を感じることはありませんでしたが、チャンネル名称から“プレミアム”が削られ、BS2Kはいつのまにか、再放送と「スペシャル・蔵出し・選」、そして“永遠のリバイバル”映画ばかりのリユースチャンネルに変貌しています。
その一方、地上波でも「選」を付けたドキュメンタリー番組の再放送が増えるのと合わせたように、電通ゆずりのお手軽な情報消費番組が目立つようになりました。新放送会館の建築費の高騰や、五輪を始めとする集客イベントの放送権など、中抜きだけは無いとは思いますが、番組制作費が年を追って削減されているように思えます。もちろん、干支が一回りしたここ12年で社会、そして精神の著しい劣化が放送にも及ばなかったはずはないでしょう。時代を映す価値ある番組制作を作り続ける能力そのものが失われるという冷徹な現実もあるはずです。
長くドラマ制作業務に関わったものからすれば、あの『人間模様』の名シリーズまでが、遺産で食うためだけに再編成されている“よう”に見えるのが、何とも悲しいところです。
そうした中、昨秋より総合テレビの深夜に、あの大長編『坂の上の雲』が放送され続けています。戦後の高度経済成長の最後を飾る時期に刊行され、70年代後半に文庫されるやサラリーマンの圧倒的な支持を得て現在までに2千万部近く刊行されている司馬遼太郎原作のドラマ化です。
司馬曰く、「国家が至上の正義でありロマンティシズムの源泉であった時代」を描いた作品ですが、何度も繰り返して書かなければならないことは、彼自身が映像等の二次利用を許諾しないと生涯言い続けたことです。「戦争賛美の作品と誤解される危惧」という一般的な解釈でさえ、NHKと著作権継承者は故人の意志を踏みにじりましたが、私はそこにもう一つの懸念を感じていました。
それは、ほぼ同時期に書かれた当時存命の主人公が登場する『故郷忘じがたく候』と、以後の朝鮮文化への司馬自身の深い傾倒にあるのではないでしょか。先の大作は新聞小説として掲載されることが前提の執筆であり、本人もその条件下で書いたはずですが、「異胎の時代」を意識するあまり、あの様な内容になってしまったことへ何らかの悔恨があったと思えるのです。
韓国現代史の負の遺産を文学として取り上げ直したハン・ガンがノーベル文学賞を受賞し、日本でも光州事件や済州島の四・三事件が、再び話題に上るようになりましたが、日本の負の遺産とも言える大陸侵攻から韓国併合へと至った道筋を辿るように、かの国では、時あたかもキム・フン(金薫)の『ハルビン』を彷彿とさせる映画が公開されています。司馬の“悔恨”を受け継ぐような映画を作るという“応答”が、はたしてこの国から新しく生み出されるでしょうか。
その一方、地上波でも「選」を付けたドキュメンタリー番組の再放送が増えるのと合わせたように、電通ゆずりのお手軽な情報消費番組が目立つようになりました。新放送会館の建築費の高騰や、五輪を始めとする集客イベントの放送権など、中抜きだけは無いとは思いますが、番組制作費が年を追って削減されているように思えます。もちろん、干支が一回りしたここ12年で社会、そして精神の著しい劣化が放送にも及ばなかったはずはないでしょう。時代を映す価値ある番組制作を作り続ける能力そのものが失われるという冷徹な現実もあるはずです。
長くドラマ制作業務に関わったものからすれば、あの『人間模様』の名シリーズまでが、遺産で食うためだけに再編成されている“よう”に見えるのが、何とも悲しいところです。
そうした中、昨秋より総合テレビの深夜に、あの大長編『坂の上の雲』が放送され続けています。戦後の高度経済成長の最後を飾る時期に刊行され、70年代後半に文庫されるやサラリーマンの圧倒的な支持を得て現在までに2千万部近く刊行されている司馬遼太郎原作のドラマ化です。
司馬曰く、「国家が至上の正義でありロマンティシズムの源泉であった時代」を描いた作品ですが、何度も繰り返して書かなければならないことは、彼自身が映像等の二次利用を許諾しないと生涯言い続けたことです。「戦争賛美の作品と誤解される危惧」という一般的な解釈でさえ、NHKと著作権継承者は故人の意志を踏みにじりましたが、私はそこにもう一つの懸念を感じていました。
それは、ほぼ同時期に書かれた当時存命の主人公が登場する『故郷忘じがたく候』と、以後の朝鮮文化への司馬自身の深い傾倒にあるのではないでしょか。先の大作は新聞小説として掲載されることが前提の執筆であり、本人もその条件下で書いたはずですが、「異胎の時代」を意識するあまり、あの様な内容になってしまったことへ何らかの悔恨があったと思えるのです。
韓国現代史の負の遺産を文学として取り上げ直したハン・ガンがノーベル文学賞を受賞し、日本でも光州事件や済州島の四・三事件が、再び話題に上るようになりましたが、日本の負の遺産とも言える大陸侵攻から韓国併合へと至った道筋を辿るように、かの国では、時あたかもキム・フン(金薫)の『ハルビン』を彷彿とさせる映画が公開されています。司馬の“悔恨”を受け継ぐような映画を作るという“応答”が、はたしてこの国から新しく生み出されるでしょうか。
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