初めての船旅52013年11月03日 18:32

 先に述べた水先案内人の講座はそれなりに充実していたものの、自分自身の関心(韓国文化)に沿ったものはなかなかありません。どうしても歌や踊りが多くなる中、一回だけ「詩と音楽が流れる午後」という環境財団の企画がありました。まだ簡単な聞き取りもままならない韓国語ですが、とりあえず参加してみたら、そこにはホッとできる空間がありました。
 そこで、自分自身でも何か企画してみようと思いつき、準備も無いままに申請したら通ってしまいました。「尹東柱の詩を日韓で読みあいましょう」という大胆不敵な催しです。^^;
 今も手元にある岩波文庫「空と風と星と詩 -尹東柱詩集- 」は、昨年秋に発刊され、日本語に訳された詩全てについて原詩がそのまま採録されているという優れものなので、この文庫本を日本人同乗者に知ってもらいたいという思いで呼びかけました。
 私が韓国語に興味を持ったきっかけが原音の響きでしたから、iPhoneに入っている朗読音声を便りに五篇の原詩(ほんの一部に漢字が用いられ、ほとんどがハングルで書かれているもの)の朗読を聞こえるままにカタカナに起こし、参加者に配付することにしました。
 台風の影響で那覇に寄港できなかったのも幸いし、揺れる船内で何とか手書き資料を仕上げ、有料コピーで両面10枚を作ったのが企画前日。さらにオプションツアーで通訳してくれたCC(Communication Coordinator)に当日の補助を快諾してもらい何とか形にすることができました。
 船内最終日の夕方で、おそらく疲れがたまっている頃かと思いましたが、幸いにもCCを含め7名の方々に集まってもらえました。簡単な挨拶と進行を事前に書いた原稿を使い、日韓二カ国語で進めました。五篇の詩を一篇ずつ、CCが韓国語で一度通して読み、次に1行ずつカタカナを頼りに全員で唱和しました。韓国からも詩人のキム・ソヨン氏が参加してくれたので、その都度、私が日本語でも通しで朗読してみました。採り上げたのは、「春」、「とうがらし畑」、「序詩」、「月のように」、「新たな道」の五篇です。
 こうして、あらためて読んでみた尹東柱氏の詩は、ハングルを使うことさえ大変困難な状況下で、かすかな光を求めるたゆまざる心に支えられた言葉たちであったことが良くわかります。そして、日本でも、彼を慕う人達が、毎年彼を想い、それぞれに集いを開いていることを簡単に紹介しておきました。

初めての船旅42013年11月02日 19:19

 今回、船が寄港したのは3カ所。釜山・基隆・上海です。同じ港町と云っても規模も雰囲気もずいぶん異なります。
 釜山は坂の街という印象。少ない平地にビルや住宅地が密集し、その隙間を道路が埋めているような感じです。一通ならぬ転回通行(?)というのも初めて知りました。大都市と港町の二つの顔が併存しているような街ですね。
 市内でも一段と高い丘の上にある民主公園に行き、記念館の教育文化チーム長イ・ドンイルさんから丁寧な説明を受けることができました。漢字で“抗争”と表される民主化運動の歴史は、同時代に隣国でのほほんと育った日本人にはなかなか想像がつかない激しいものです。1960年前後の安保改定以降、沖縄を除けば“大きな”市民運動を経験することなく過ぎた“戦後”の日本と違い、歴史の節目に多くの血を流してきた韓国の一面を垣間みることができました。
 基隆では九份まで足を伸ばしましたが、古い金鉱の街、植民地下の残映、悲情城市の舞台は、中国内やアジア近郊からの観光客でごった返していました。あまりに人が多く、かき分けるようにして豎崎路を登って一休み。町中に猫の置物を見かけましたが、階段で数匹の猫がたむろしていました。猫も人混みはきらいなんでしょうね。基隆は港近くに夜市があって、そちらの方がホッとするたたずまいでした。^^;
 上海では大韓民国臨時政府の旧跡を訪ねると共に、復旦大学日本研究センターで中国国内の韓国独立運動の歴史を聞きました。日中戦争中の抗日勢力の下で細々と繋いできた朝鮮半島の独立運動はほとんど交わることなく各地域毎に解放を迎え、冷戦によって分断された二つの国にそれぞれ帰ることになったという非情な歴史がそこにありました。
 今回はいずれもオプショナルツアーだったので、時間制限も多く、一カ所をじっくり見て回るようなことはとてもできませんでしたが、なかなか行くことも無いだろう場所で、あまり出会うことの無いような人達に直接話しを聞くことができました。東アジアの近代史は朝鮮半島が置かれた立場から眺めた場合に一番良く把握できるような気がしています。

初めての船旅32013年11月01日 18:38

 宿泊した船室は4人部屋、しかも中央通路を挟んで窓が無いキャビンですが、一番最初に乗船した関係で船首側の下段を使わせてもらうことができました。10日間の短期クルーズとはいえ、これは大きなアドバンテージです。荷物の出し入れ、ちょっとした休憩、洗濯物の干す時など、ことごとく階段を登らなければならない手間を省くことができましたから、初めての船旅をまずまず苦労なく過ごすことができたと思います。航海中、船室内は軽装で適温。やや乾燥ぎみでしたので、2回行った洗濯には向いていました。最後に船を降りる前日、お礼がわりに出雲の「塩金平糖」を同室者に配りました。^^;
 23時の消灯だけを最初に決めて、後はなるようになるだろうという大人の事情で始まった相部屋生活ですが、お互い関心も違うので、緩やかなコミュニケーションを保ちつつ、時々一緒に食事をする以外、出たり入ったりのすれ違いがほとんどでした。共通していたのは一つだけ、みんなリタイア組(入国カードの職業欄はretired)であることです。乗船客の多くが60歳前後以降の定年退職者と思われます。
 船内の食事は普通といえるのでしょうか。朝・昼はシティホテルのバイキング並み、夕食は洋食と日本食の軽いコースが多く、韓食はビビンバほかが一度出たぐらいです。ただし、キムチは無料で追加注文できました。バーや居酒屋もあるのですが、私は飲めませんし、食事を含め、比較する船旅の経験が無いので、どの程度のクラスのものなのかは全くわかりません。
 地上一般でのテレビ・新聞はもちろんありませんが、船上はインターネットも衛星回線ですから、かなり割高です。10日ぐらい無くても困らないほうですが、それが100日に延びたらどうかと考えてみると、知らないうちに生活の多方面でネットを使うことが多くなっているのに気付かされます。生活の一部として日常的な関わりを持ち続けているうちに、欠かせないものだと思わされるようにもなりました。週1回の休肝日ならぬ休網日(?)が果たしてできるだろうか。そんなことまで考え始めた旅でした。

初めての船旅22013年11月01日 14:56

 ピースボートというと地球一周というイメージが強いけれど、年3回の100日クルーズの隙間にある点検時期前後に10日間程度行われるのが韓国環境財団との共同事業であるピース&グリーンボートです。今年で6回目だそうです。
 二団体主催の船内企画で講義・公演などを行う“水先案内人”と呼ばれる人は今回20名で通常より多かったようです。ただし、同時通訳なしで韓国語話者のみだったり、環境財団が事前に非公開としたものもあって、一般の日本人には参加できない企画も一部ありました。
 船内企画の内容は平和、脱原発、環境、教育、歴史など社会問題を扱う講座から、音楽・マジック・落語などの各種ライブ、体操・卓球・ダンスなど体を動かすもの、英会話サロンなど様々です。そうした一般向けイベントとは別に乗船者が自主的に提案して催す自主企画もあります。たとえば、一緒に歌ったり踊ったりするもの、過去のクルーズの同窓会などです。主催団体の講座を含め十分に練られた企画は多くありません。揺れている船の中で1時間以上集中して聞き続けるのは思いのほか疲れますので、多少緩くても良いのかも知れません。様々な問題に出会う場だと考えれば納得できますが、参加者は乗船客の数から考えると決して多くはありませんでした。
 ただ、この船内企画の内容が発表されるのが当日朝の船内新聞なので、事前に予定は立てられませんでした。自主企画の申告も2日前の午前中(1時間弱)ですから、自分が聞きたい企画とぶつかる可能性もあります。なかなか難しいところです。
 クルーズ中に私が毎回参加したのは朝8時から始まる恵泉女学園大学イ・ヨンチェ准教授の「もうひとつの韓流連続講座」です。韓国の様々な社会問題がどのように映画やドラマで表現されているかに着目し、日本人が韓国を理解するための道筋をわかりやすく示してくれました。

初めての船旅12013年10月31日 19:37

OceanDream号
 40年近く勤めた職場を先月退職したので、卒業旅行(^^)のつもりで「Peace&Green Boat 2013」というクルーズに参加しました。わずか10日間の船旅でしたが、外洋に出ること、4人部屋に泊まること、台湾・中国を訪ねることなど、私にとっては全て初めてのことです。
 写真のオーシャンドリーム号は1500名超の乗員可能な大型船で、地球一周のピースボートに使っている船です。船内には船旅を過ごすための様々な設備がありました。10日間のうち約6分の5を洋上で過ごすのですが、遊び下手な私にはとても使いこなせそうもありません。今回は日本のピースボートと韓国のNPO環境財団の共同事業で、日韓から相乗りした約1000名の乗客向けに様々な講座やライブイベントが山ほどありましたので、あまりのんびりすることもなく過ごしました。
 何事も経験なのでしょうが、流れゆく時間にゆったりと体を預けたりすることも長い船旅には必要なスキル(?)ではないかと感じました。
 クルーズは博多から出航し、釜山・基隆・上海・博多へ寄港、最後に釜山へ戻りました。つまり、日本人は博多発着の10日間、韓国人は釜山発着の10日間です。本来なら基隆の後に那覇にも寄港する予定でしたが、折り悪く沖縄近海が台風27号の強風圏に入り、那覇港に入港することができませんでした。
 横風に吹かれながら大揺れの船内は、まるで私の好きな映画「海の上のピアニスト」を彷彿とさせます。船酔いで船室から出られない人もいると食事の時に何人かの人から聞きました。私はひどい船酔いにはなりませんでしたが、体が揺れ続けるとだんだん頭が麻痺してゆくような感覚を覚えました。ごく軽いめまいのような感じです。後日紹介するつもりですが、手書き資料を作る際は辛かったです。こうして思い出しながら書くと揺れる感覚を思い出しますね。^^;