来征へ語り残す「国葬」2022年08月02日 23:06

参議院選挙で投票率の上がった国分寺市での若者の取り組みを参考にして、先月末、東京新聞が10万人以上の有権者がいる全国の市区町村を対象に選管資料を調査した結果を報じていました。65.10%という最高率を誇る文京区を筆頭に投票率トップ10のランキングが図示されていましが、その6位に鎌倉市が入っていることに関心が向きました。
 (たしか)東京新聞が報じた別の統計では、神奈川県地区別の政党別得票で「立憲民主党」が「日本維新の会」を上回った数少ない地区の一つが鎌倉市だったからです。多くの文人が住み、数々の旧跡を含む文化都市的な一面は知られていますが、住民の政治意識の高さが、“ゆ”党とも呼ばれるポピュリズム政党を良しとしない投票行動に結び付いたのではないかと思います。
 それにしても、いつのまにか神奈川県はすっかり「“保守”王国」になっていたんですね。子どもの頃の革新自治体はもう昔話です。私自身は思想的には保守の人間なので、カルトにまみれて国を危うくする現体制など「保守」の風上にもおけません。実はその昔、中学の同級生に「民青」の集まりに誘われたものの、中心的な一人を除き自らの意見が自由に表明できないような組織には入りたくないと、すぐにその場を抜け出したことがあります。その私が、現在では共産党とれいわ新選組・社民党の三者で議会の3分の1を占めて欲しいとさえ思うようになりました。
 戦後の対米隷属は、「不沈空母」の中曽根以来、本来セットだったはずの対米自立をあきらめたばかりでなく、生き残った満州由来の偏狭なナショナリズムと表裏一体で進んでいます。アメリカにとって、この国を“占領国”としての位置付けに戻せたという認識は、バイデンが横田から入国したこと一つで十分に説明できるでしょう。彼らには政権中枢がカルトに侵されていようが、米軍指揮下で動く“軍隊”さえ確保できればそれで良いのです。
 安倍晋三の祖父岸信介は戦後まもない頃に次のような歌を書いたそうです。「名にかへて このみいくさの正しさを 来世までも語り残さむ」。来世は“らいせ”なので字足らずですが、これが「来征」ならば7文字です。軍事予算の限りなき膨張が進む現体制が続く今、“いくさ”はひたひたと近づく気配です。秋の「国葬」はその出発点になるでしょう。

象形の猫2022年08月02日 23:08

一昨日、「アニメ−テッドラーニング」のオンライン講習会に参加しました。これは、様々な学習の場で、学びを活発にするアニメーションの利用を試みているグループが主催したもので、海外で日本語教育を実践している先生方が多く参加しています。講師と関係者を含めても10名という人数だったこともあり、集中して受講することができました。
 今回、地元の国際交流ラウンジで日本に住む外国人を相手にするだけのボランティアには少し敷居が高いところもありましたが、動画になじんだ新しい世代に向けたアイデアを探ってみたいと考えていました。テーマは漢字。動きを表す漢字を使ったパラパラ漫画を作り、模擬ワークを計画してみるという課題です。当日講師からは、漢字一文字をそのまま使いその意味に応じたアニメーションを作る説明がありましたが、具体的な日本語教室でのレッスンを想定して、私は漢字そのものが持つ多様性を表現する方法を準備していました。
 もともと、アイデアばかりが先行して実践が覚束無い性格なので、清書することなく下手な手書きをそのままアニメーションにしています。簡単に説明すると、漢字はもともと「犬」のように“象形”から生まれています。その表意の特徴を別の“形声”文字にも転用したみただけです。取り上げたのは「猫」。この一文字から意味を表すカタチや鳴き声、違った読み方などに変化するアニメーションを作りました。これを提示することで漢字の面白さが伝わればという、いささか軽薄な思惑です。参考までにいくつかムービーファイルを続けてアップしてみます。

カルトには悪夢だった民主党政権2022年08月11日 23:10

今になってとても頷けることの一つに、安倍晋三が繰り返し語っていた「悪夢のような民主党政権」という言葉があります。カルト団体が政権中枢に強い関係を持てなくなった時代は、それこそ「統一教会」にとって悪夢のような3年間だったのでしょう。
 戦後、対米隷従を旗印にしてきた自民党が、その体制のまま、いたずらに戦前回帰のような態度を示し始めたのは、北朝鮮の独裁者とも関係を深める一方で「勝共連合」の名を使い続けた無節操な宗教団体と、“選挙”を通じた強いつながりの中で恫喝を軸にした“集金システム”という一致点があったからにすぎません。一方は霊感商法、一方は血税の中抜き還元です。
 グローバリズムが進み国民国家が解体されてゆく時代にあって、民主主義は啓蒙から反知性へとその特徴を変え始めました。「自民党」という名が付きさえすれば何らかの“得”になるという“ポイント”思考で支持する人間が現れる道理です。高等教育への公的支出が減る一方で、あの愚劣な「道徳」教科化が進む先に未来は開けるのでしょうか。言われたことだけ素直に従う精神からは、“抵抗しない”という倫理的頽廃が生まれます。「五輪」も「国葬」も、「“マイナ”カード」も根は一緒です。

洛陽の民歌に残る苛酷な時代2022年08月18日 23:11

先週末、86回の連続放送が終了した中国ドラマ『三国志 司馬懿 軍師連盟』は、母国でも評判になっていたと留学生から聞きました。『レッドクリフ』に代表される“大合戦”シーンを中心にした娯楽大作ではなく、建国前から「魏」に仕えた数多い群臣たちのドラマです。曹一族の将軍・皇帝やそれに従う政治官僚・宦官などのキャラクターが見事に描き分けられていました。
 文人の五言詩や民間歌謡から集められた楽府(がふ)など、この時代に作られた韻文は建安文学と呼ばれるほど隆盛したようですが、その中心に三曺と呼ばれる曹操・曹丕・曹植がいたというのは驚きです。ドラマの中にも朗読があってストーリーを盛り上げる効果に役立っています。その中で特に印象的なのは、関羽の首を埋葬した後、心を鎮めるようにして馬車で郊外を廻った曹操が耳にする洛陽の民歌です。ビデオに撮って残して置いた映像の字幕から引用します。中国ドラマに良く出てくるエンディングの歌とはかなり違います。
 わずか15で従軍し 齢80にして帰途に就く
 道で郷里の人に会い 家族の無事を尋ねたり
 はるか先に我が家を見れば 松柏の茂る墓が連なれり
 野兎が土塀の穴を抜け 雉は梁から飛び立てり
 庭には雑穀がはびこりて 井戸の周りに葵が生える
 雑穀を集めて臼でつき 葵を摘んで汁を煮る
 暖かな食事を作れども 食べてくれる者もなし
 門から出て東を眺むれば 涙がとめどなく衣を濡らす
 曹操はもちろんのこと、司馬懿も三国統一を見ることなく世を去ります。この時代、中原はいくさばかりでした。この詩が番組全体の最後に再び詠まれたのは、苛酷な時代を生きた“民”への鎮魂のような気がします。日本の古代史ドラマの中で万葉集の防人の歌が詠われることはあるのでしょうか。
 それと、もう一つ。この番組の音楽をあの「S.E.N.S.」が担当していたと知りました。台湾映画『悲情城市』や90年代テレビドラマの劇伴などで知られたグループですが、個人的には映像技術を担当したNHK特集「地球汚染」のテーマが記憶に残っています。

隔離と閣離2022年08月19日 23:13

コロナウィルス感染者と濃厚接触した人は“隔”離し、カルト宗教団体と濃厚接触した議員はとりあえず”閣”離する政府