路上の映画を路肩の映画館で?2016年07月16日 20:48

 “ローポジション”という言葉は映画の専門用語の一つで、撮影対象に対しカメラを低い位置に置いて撮影する技法のことです。下から仰ぐように撮る“ローアングル”とは微妙に違います。記念写真やスナップで膝を折って撮るのも、おそらく“ローポジション”かと思います。この専門用語そのものを名前にした映像グループが横浜にあって、事務所から近い横浜シネマリンという映画館で、メンバーを含む横浜を拠点にするドキュメンタリー作家の作品13本を集中上映するイベントが始まりました。

 毎日違うテーマで構成した2本の作品上映と監督トークショーを行いますが、初日の今日は「路上」と題し「あしがらさん」と「ヨコハマメリー」という2本立てです。一方が、満州で生まれ青森に引き揚げ、20歳前後で上京してからは転々と職を変え、いつのまにか20年以上を新宿の路上で生活するようになった男性なら、もう一方は横浜の目抜き通り伊勢佐木町界隈の路上を、白塗りの顔と純白のドレスで歩く元米軍相手の娼婦だったという女性。境遇も性格も生活する場所も全く違う二人の主人公に対し、撮影する監督の方も非常に異なる立ち位置や関わり方で作っていたことが分かりました。

 ボランティアで出した一杯の豚汁がきっかけで近しくなり、そのままを記録に残したいとカメラを向け始め、支援者なのか取材者なのか判別が付かないままにより深い関係を持つようになった飯田監督と、“メリーさん”への個人的関心を突き詰め、様々な想いを持つ関係者に綿密な取材をし、時間をかけて織物を縫うように仕上げていった中村監督。二人の映画作家の特徴は対照的なのですが、二本続けて見るとそれが何だか絶妙なハーモニーのようにも感じられて面白い経験でした。

 明日以降、22日まで続きます。よろしかったらブログ(http://lowposi.jugem.jp)を参考に横浜シネマリンへおいで下さい。