傾聴からの対話2021年02月13日 18:30

妙蓮寺の「本屋・生活綴方」が『さよなら、男社会』(尹雄大著、亜紀書房刊)の刊行記念となるトークイベントを開いた。コロナ禍で集まれない中、Youtubeの配信で行われたが、時ならぬ五輪組織委会長の“女性差別発言”も後押ししたのか、50名近くの参加者があった。
 オンラインならではのトラブルもあって開始が少し遅れたが、何とか無事に始まり、わずかな休憩をはさんだ二部構成のトークは計3時間を超える長丁場だった。メモしたことはたくさんあったが、ごく簡単に紹介する。
 尹雄大氏のことは、“身体”に関するコラムをミシマ社のホームページで見た記憶があるぐらいだったが、昨年末に『異聞風土記』(晶文社刊)、年が明けてから上述の『さよなら、男社会』を立て続けに読んだ。多くの媒体でインタビュアーとして活躍しているとのことで、その延長線上に、自分の中の他者を見つめ直した直近の2冊があると思う。
 さて、トーク第1部は「生活綴方」の店長鈴木さんと三輪舎の中岡さんが聞き手で、近著『さよなら、男社会』を読んでの感想や質問を元にした対話。同書の内容は尹氏本人が過去の体験をつぶさに追いながら、自らの「男性性」の成立過程や、今も社会全体に残る差別意識とその構造を問い続けたものと言える。聞き手となった「生活綴方」側の二人は性別で異なる部分は当然あるが、それぞれの体験から気づきが生まれたところは共通しているようで、この本が、“しんどい”けれど読んだ誰かと話してみたいと思わせるのは、「男らしさ、女らしさ」を頑なに守旧し続けている社会システムに、もう一度、ありのままを見直すところから生まれる“対話”を促しているからではないだろうか。
 それは、第2部の佐々木未来さんとのトークにも引き継がれた。インタビューセッションという、好悪の判断をせずに、ありのままを聴く“傾聴”のような試みや、武術の稽古に現れる自分自身への気づきなど、世の中のしがらみをとりあえず置いておき、自分自身の声が出てくるまで待ってみる“落ち着き”を取り戻す工夫が語られた。
 そう言えば、「生活綴方」のZINE「点綴」にも「誰との話も常に聞く準備がいつも整ってます」という言葉が出ていた。次は、それをどのような“対話”にしていくのかが問われるのかもしれない。

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