大学祭に見る伝統文化2019年11月15日 18:44

これまでもマスコミ報道を見聞きする限りは日本文化の貧しき側面しか感じられなかった「桜を見る会」とやらのイベントが、その事業運営にからんで公選法違反か公金私物化かでもめている。選考案や被招待者名簿を、総務省の標準文書保存期間に準拠せず、既に廃棄したと内閣官房は答弁したらしい。嘘まみれの政権運営が蟻の一穴から破綻することを畏れたのか、来年は中止すると主宰者がトンチンカンなことを言い出したそうだ。
 公金がらみのことで云えば、国家予算規模からみて極めて少額の“横領”に過ぎないこの案件から独裁政治の問題を提起せざるを得ないという状況が何とも空しい。やはり飲み食いの“カネ”のことでないと話が伝わらないのだろうか。人殺しの道具をたくさん買ったり、2週間限りの浪費運動会のために、“兆”の単位の無駄遣いが行われていることは不問に付すのが、この国の“流儀”というものなのかもしれない。投票せず“隷従”を良しとする国民が、この国の政治を腐敗の極みに落としている現状をただ憂えていても詮ないので、気分転換に投稿することにした。
 そろそろ二週間になろうかという先々週の土曜日。元留学生と一緒に日本の大学祭を見学しに行った。渋谷の奥、旧豊多摩郡常磐松近くにある國學院大學である。旧町名に因んで「若木祭」と呼ばれている。神道を中心とした国学の研究で有名な大学ということもあり、大学祭の企画には日本の伝統文化に沿ったものが多い。書道や茶道・華道・香道などの諸道、能・禮法・神楽舞・落語・浪曲などの芸能などが、展示・実演されていた。
 なかでは書道部が五室を揃えた大々的な展示を行っていて、その中には指導する先生方の能書良筆も含まれる。カミさんが書道を習っているせいで、門前の小僧ならぬ耳学問で、王羲之やら顔真卿など臨書のお手本になる有名な中国の書人の名前だけは知っていたこともあって、それなりに面白く見ることができた。
 そしてもう一つ、事前に目を付けていた実演を聴くことができた。学内サークルでありながら、学外での演奏活動も積極的に行っているという「青葉雅楽会」というグループの定期演奏会である。「越天楽」(えてんらく)などで有名な雅楽は京都や伊勢で本格的なものを聴いたことがあるが、関東では初めてかもしれない。今回の楽器は龍笛(りゅうてき)・篳篥(ひちりき)・笙(しょう)の三管と、太鼓(たいこ)・鞨鼓(かっこ)・鉦鼓(しょうこ)の三鼓という構成。三管は各三名、三鼓は各一名の12人編成で、両絃の楽琵琶と楽箏は省略されているので、本格的な雅楽ではなく、神社などで奉納される略式の演奏になる。しかし、生でじっくり聴く機会は日本人でもなかなか無いので、元留学生には良い経験になっただろう。
 学食のカツカレーを食べてから、大嘗祭の企画展を開催している隣接の國學院大學博物館にもちょっと寄ってみた。皇位継承に関する儀礼そのものにはあまり関心は湧かないが、具体的な展示物で概観できるのが良い。何よりここは無料なのだ。
 この日は、渋谷の中心に新しいランドマークビルが開業した翌日だったので、待ち合わせ場所を駅南側の渋谷ストリームにするなどして混雑をさけたせいか、道沿いの金王八幡宮あたりを含め、人混みを避けてのんびり歩くことができた。少しは“雅”(みやび)な気分も味わえたせいなのか、あまり疲れも感じなかった。

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