ある留学生との対話2020年09月15日 14:16

昨日、休学中で帰国している韓国人留学生と久しぶりにオンラインで再会した。政府やマスコミの情報を鵜呑みにせず、直前まであまり防災の準備などしないということだったが、実際、韓国に連続して到来した大型台風の影響は、高層住宅が建ち並ぶ人口集中都市ソウルではそれほど大きくなかったようにも聞く。半島南東部各地で停電や冠水・土砂崩れなどの被害はあったものの、日本のような森林を切り開く宅地開発が多くないのか、被害は当初予想していたよりは少なかったようだ。もちろん、北朝鮮での被害は甚大だっただろうが…。
 さて、話は高波つながりで進む。先日、Facebookであの『稲村ジェーン』が公開されて30年経つと聞いた。サザンオールスターズのボーカル桑田佳祐が監督した大長編“MV”のような作品である。当時、季節に合わせて封切られたのかどうかは寡聞にして知らないが、劇中の台詞「暑かったけどよ〜、短かったよな、夏」が今は懐かしい。稲村ヶ崎の風景がその後どう変わったかはわからないが、1990年代の雰囲気は今よりずっと“猥雑”だったことは確かだ。
 この30年の間に人々の生活や社会意識はずいぶんと変わってしまった。だから、羽目の外し方ひとつとっても、何か見えないモノに押さえつけられていて、いきなり爆発してしまうような不気味な危うさは、映画の公開当時は無かったような気がする。“猥雑”さに溢れた裏社会や一時(いっとき)の狂乱も多く残っていたに違いない。そうしてみると、後に大麻取締法違反で逮捕される主演の加勢大周が、融通の利かない無骨者として描かれていたのがとても印象的だ。
 近年、同様の違反で逮捕されたピエール瀧の出演作品が軒並みお蔵入りになったのに対し、伊勢谷友介の出演映画は再編集せずにそのまま公開予定だという。昨日、「個人が起こした事件と作品は別である」という発表が公式サイトに上がった。“臭い物に蓋”をする態度で非難しやすいものへ抑圧的に動くこの国の同調圧力に負けずに、今後も抗って欲しい。
 そういえば、件(くだん)の留学生が面白いことを言っていた。最近の日本のコンテンツは“How”に長けているけれど、あまり“Why”が感じられないと。コロナ禍で怪しい“猥雑”さがこれ以上消えないように願うばかりである。

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