師の影を踏まない社会的距離2020年05月18日 11:21

Zoomによるオンライン狂言ワークショップも昨日で4回目。紹介されたのは『重喜』という演目。寺の住持が翌日の結願の準備に弟子(重喜:じゅうき)に頭を剃らせようとするが、粗忽な若僧(にゃくそう)は剃刀を手に住持へぶつかってしまう。「弟子七尺去って師の影を踏まず」と諭され影を避けるものだから近づけず、今度は剃ることができない。仕様がないので長い棒の先に剃刀を取り付け剃ろうとするが、勢い余って住持の鼻を削いでしまうという話である。その昔(今でも?)理容店で使われていた皮砥(かわと)で剃刀を研ぐような所作が面白い。
 七尺といえば、ちょうど今話題にもなっているソーシャルディスタンスの対人距離2mにあたる。私が覚えている「三尺下がって師の影を踏まず」の倍以上だが、中国唐時代の仏典には用例があるようだ。いつから短くなったかは不詳だが、安土桃山時代の俚言には“三尺”とあることを講師の奥津さんから教えてもらった。影を踏まないほどの師弟関係が復活することはないだろうが、距離を取る社交術から新しい俚言(諺)が生まれてもおかしくないだろう。
 “七尺離れて飛沫かからず”はまだしばらく続く。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://amiyaki.asablo.jp/blog/2020/05/18/9333325/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。