地域の文芸誌とは2020年04月08日 10:38

小説を断続的に読むというのが苦手で、いわゆる文芸誌と呼ばれるものをほとんど買ったことがないのだが、過日、品川区中延の「隣町珈琲」が“地域文芸誌”と銘打って発刊した『mal˝』という雑誌を送ってもらった。文芸誌と言っても私が関心を持っている多種多様な人々がエッセイを寄せていて、インタビューや対談のほかに喫茶店や私塾(?)に集まる同人のような人達の文章も載っている。
 「隣町珈琲」は今から4年ぐらい前に玉川奈々福さんの浪曲を初めて聴きに行った一度きりだが、その時の印象が強烈に残っており、Facebookに時々流れてくる情報を何気に見ていて上記の文芸誌発行を知った。そして、もう一つ。創刊の巻頭インタビューが作家の小関智弘氏だったことも読んで見ようと考えたきっかけである。
 大田区の工場で旋盤工として働きながら小説やエッセイを書き続けてきたこの作家の代表作に『羽田浦地図』という作品があり、それはNHKでドラマ化されている。1984年の「ドラマ人間模様」。前年に「連続テレビ小説」の映像調整業務から1年以上離れられず、そこから逃げるようにして新たに希望して就いた番組がこのドラマシリーズだった。
 池端俊策脚本の参考になった原作はもう一つあって、それは『錆色の町』という。同じ「人間模様」で放映された『夢千代日記』の舞台は“鉛色の空”と形容された山陰だったが、戦後まもない東京下町の工場地帯は“錆色の町”と表現される独特な“色合い”を持つ場所だったのだろう。当時、そこまで意識する余裕はなかったかも知れないが、目立たなくても心に残るような「佳作」というものがあり、そうした仕事に関われることを喜んだ記憶がある。
 今回の“地域文芸誌”という一風変わった取り組みは、育った街の近くに今も住み、そこに“居場所”を作り、記憶と共に語り合える仲間を集めた“新しい世間”作りの一つの成果だ。それが、とてもうらやましい。だから、この騒ぎが収まったら、その代わりになるものを街に出て探し歩きたいと思う。

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