説話の語り2019年06月10日 13:51

梅雨に入ったせいか半袖(はんそで)では少し肌寒(はだざむ)いぐらいの天気の中、元留学生との日本語レッスンを行うため武蔵小杉に向かった。留学する前に母国で日本語能力検定N1を取得していて、とても綺麗な日本語を話す学生だったので、修士論文の日本語チェックが終わったらRKKも退会すると思っていたら、豈図(あにはか)らんや、日本で就職してからも継続することになり、そろそろ一年が経つ。日本語能力は全く問題ないのだから、レッスンとはいえ自由会話が中心となるが、それなりにこちらも話の“種”を仕入れておく。今回は、SSFF&ASIA2019と「能」、そして日吉の「ともだち書店」で開催された遠野(とおの)物語の語りの会だった。
 川崎の日本民家園の中にある南部曲屋(なんぶまがりや)で聴くことができる遠野出身の語り部大平(おおだいら)悦子さんが小さな書店で語った。演目は「ねずみのすもう」、「かっぱの手紙」、「娘のしゃれこうべ」など6編。「ねずみのすもう」はジブリ美術館土星座の上映作「ちゅうずもう」でも知られる有名な民話。「かっぱの手紙」は、ある馬方(うまかた)が峠で出会った男に向こうの沼まで樽を運ぶよう頼まれる怪奇譚。そして「娘のしゃれこうべ」は、花祭りの日に“髑髏(しゃれこうべ)”と遭遇した爺様の功徳が親子の再会につながるという話。聴きながら、まるで複式夢幻能のような展開に、仏教説話や能と民話の深いつながりを感じた。
 そんなこんなで、元留学生を相手に先日買い求めた大平さんの著書から「ねずみのすもう」の冒頭を読んで聴いてもらっていたら、突然テーブルの脇から声を掛けられた。レッスンに使わせてもらっている川崎市民活動センターが入っている中原市民館で「おと絵語り」という公演を永く続けているグループの代表で、民話の話を耳にしたので思わず声を掛けてしまったとのこと。色絵巻をスクリーンに映し出すというオリジナルの舞台上演をしているので関心があれば是非観に来るよう誘われた。ともだち書店のことも良く知っているようで名刺を交換したが、こうした繋がりが様々に拡がっていくのはとても刺激的で、元留学生も思わぬ展開に驚いていた。

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