当たり前の世界へのメッセージ2018年08月17日 14:32

 暑さも峠を越したのか、夜風が涼しく感じられる。菊名駅からの帰り道。月と木星、そこから少し離れて金星が輝いている空もこころなしか澄んでみえた。
 横浜美術館に行ってきた。3月にあった東京藝大アニメーション専攻の修了制作展以来だ。モネ展ではない。本格的な絵画を観るのは少し苦手だ。ゆっくりと観たいがどうしても時間がかかる。昔は3,4時間ぐらい普通だったので必然的に一人で行った。会場で後から続く人達が先に進もうと促すような気配が気になるし、最近では長時間立ったままの姿勢も少し辛い。かといって途中で一休みするのはあまり好きではない。それで、大がかりな美術展に行くことが少なくなった。
 さて、話を戻す。「Short Short Film Festival & Asia」という米国アカデミー賞も公認の国際短編映画祭が毎年6月頃に東京を中心に開かれ、このプログラムの一部が横浜でも開催される。昨年まではみなとみらい地区にあったBrillia Short Short Theaterが会場だったが、惜しくも閉館となってしまい、今年は時期をずらして横浜美術館のレクチャーホールで開かれた。
 上映作品には、フェスティバルの受賞作品の他に、映画祭が赤十字(国際委員会)と共催する「戦争と生きる力」というプログラムがある。始まったのは2015年だが私が観たのは昨年からだ。13,4本程度の短編を二つのブロックに分けて連続上映する。鑑賞は無料だ。ネットで予約するが当日券もあり、昨年同様満席になることはない。昨年は二日間通ったが、今年はアワード作品集を一つ挟んで同日に観ることができた。それでも1時から6時30分近くまで、長編3本分を続けて観るのは大変かと思ったが、意外と早く感じた。
 赤十字共催ということもあって、難民を取り上げたものが多いが、大きく三つの傾向に分かれる。一つは“壁”。東西ベルリンや難民対策で物理的な通行を妨げるものから、被災者同士の間に生まれる“壁”を描く作品もあった。二つ目は“記憶”。第一次大戦から内戦まで肉体的・精神的に様々な傷を負った人々の記憶。そして最後はテロだ。宗教や民族の違いによって一触即発の緊張感が生まれる様子が描かれていた。
 いやおうなく、そのような立場に追われた人たちは一様に表情が失われていく。中には悲惨な状況下に“笑い”が生まれることもあるが、やはりそれはあくまでも一時のことだ。その“笑い”をつなげ、それが当たり前の世界に回復することの困難こそもっと語られなければならないのかもしれない。

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