韓国語を朗読してみたら2017年09月23日 00:25

 この数週間ほど懸案だったことが、なんとか終わった。ある映画の上映後に主人公の文学作品の一部を韓国語で朗読するという役目を頼まれていたのだ。
 横浜は伊勢佐木町にある横浜シネマリンという映画館で、韓国映画の企画上映会があった。ひと月前ぐらいに新宿で行われたものを、そのまま横浜でもということなのだが、一つだけ違ったのは、初日の作品上映後に詩の朗読会が開かれたことだ。映画は『空と風と星と詩人』。植民地とされた朝鮮半島から日本へ渡り、敗戦前に治安維持法の容疑で収監され、福岡刑務所で亡くなった詩人尹東柱を描いた作品だ。
 上映したシネマリンから、私も毎年通っている立教大学のイベント「詩人尹東柱とともに」の主催団体へ企画依頼があり、そこから、学習者の一人として朗読への参加を請う相談があった。日本語ではなくて韓国語でというところに惹かれて、つい受けてしまったものの、中級の初めあたりをうろうろしているうちに、すっかりいい加減になっていた発音が問題だった。さいわい、誘いを受けた先生から、私が読む予定の3篇についてマンツーマンで指導していただき、一応“カタチ”にはなった(と思いたい…)。
 以前、8月に観たときの感想をここに載せたが、あらためて「新しい」言葉を模索していた詩人の態度が全編に表れていたように思う。それは、この映画での日本語の台詞が以前の韓国映画と比べて格段に良くなったことと、あたかも“うらがえし”になっているようにもみえる。映画の後の詩の朗読会というものを今まで体験したことがないので何とも言えないが、こうした試みが、一方で“言葉”への信頼を取り戻す一歩となる可能性もあるのかもしれない。なにはともあれ参加できて良かった。
 それにしても、尹東柱の親友である宋夢奎が、己の罪状へ署名しながら言ったひとことが耳に残る。「劣等感」からくる大言壮語の果てに、多くの命を奪い奪われる戦争が始まるのは、いつの世にも通じることだから…。
 企画上映は全部で4本。当初日替わりで10月6日までの予定だったが、10月13日までのレイトショーが追加されたそうだ。

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