コーヒーにまつわること2017年08月09日 18:51

 ほぼ毎日のようにハンドドリップで淹れてコーヒーを飲んでいる。その豆が今朝切れてしまった。しようがないので、銀行での用事を兼ねて外出した。屋外は今年の最高気温を記録した暑さでポロシャツに汗が滲む。
 生産地からリーファーコンテナを使って運ばれ、細心の注意でローストされた珈琲豆を熱気にさらしたくは無いので、小さなクーラーバッグを用意した。TERA COFFEEは定休日以外の夏休みは無いとのことだが、とりあえず100gずつ4袋をまとめて買った。1日2回、朝昼飲めば2週間以内には飲みきることになる。スペシャルティコーヒーは我が家のエンゲル係数を押し上げる大きな要素だが、1杯70円程度で本格的な珈琲を味わうことができるのは他には代えがたい贅沢だと思っている。
 さて、TERA COFFEEの今年のカレンダーは映画と音楽をモチーフにしたもの。8月は「真夏の夜のジャズ」だ。有名なドキュメンタリー映画の中にはサッチモやマヘリア・ジャクソンなどビッグネームも出演しているが、カレンダーに描かれているのは白人女性ボーカルのアニタ・オデイ。映画の序盤、まだ日が落ちていないニューポートのライブ会場は何とも緩やかな雰囲気なのだが、彼女の少し前にはセロニアス・モンクも出ているように、ステージ上では質の高い演奏が続いていた。この時代を象徴するジャズの名盤としても名高いが、アメリカ社会に何かしら余裕があったことがうかがえる。
 毎年、この珈琲をテーマにしたカレンダーの絵を描いているのは、横浜在住のタムラフキコさんというイラストレーターだ。以前、その原画展を六本木のミッドトーキョーギャラリーに観に行ったこともある。様々な本の表紙を飾る絵も描く人だが、最近では講談社が出している『本』という小冊子の表紙を担当している。“読書人の雑誌”と副題があるこの雑誌は定期購読もできるが、基本的には出版社のPR誌なので発行された直後なら大きな書店で無料で手に入れることができる。先日、たまたま寄った書店で8月号を見かけたのでもらってきた。
 家に帰ってから、その表紙をあらためて落ち着いて見ると、どこかで見かけたような風景がそこには描かれていた。魚のようなカタチをした夏の雲を背景に、道路をはさんで左に仮設テントや横断幕、幟旗。右にロードコーンと警官の列。これはオスプレイも利用する米軍ヘリパッドが作られた沖縄の東村高江にある道だ。講談社のWebページに作者の言葉が載っていた。「沖縄に行ってきました。宇田智子さんのお店や、やちむんの村そして高江にも行きました。梅雨の晴れ間、あんまり人も見かけないような道の脇に警官がおおぜい直立不動で立っていました。ずっとあんなにしているのか、誰の何を守るためにか。」
 オーストラリア沖に墜落して乗員の死亡事故を起こした似非の“ミサゴ”は、何事も無かったかのように今も平気で日本“国内”を飛び続けている。絵の上端にある黒い部分は、それを如実に描いている。72年前といったい何が変わったのだろうか。「あの夏…」は今もある。