日本語教室2017年07月22日 18:13

 昨日、地元の国際交流ラウンジの日本語教室の第1学期が終了した。6月中旬に“かな”から始める学習者を担当することになり、ほぼ直接法によるレッスンを6回行ってきたが、前回からようやく“かず”(数)の呼び方へと進んだ。
 一昨年、NPOに参加して、留学生との日本語マンツーマンレッスンを始めたとき、最初に試してみたのは日本語能力試験N1の模試問題集を自らやってみるということだった。結果、3回とも180点満点の171点。いずれも「読解」での間違いである。主張や理路を読み取ること以上に、視点の違いや結論への異議などに思いが先走ったものだが、同時に自分自身の言葉に対する注意散漫を気付かせてくれた。
 そんなこともあって今回、“かな”から始める3人の学習者とどのように対するかは結構悩んだ。しかし、日本語教師でもない一介のボランティアができることは、やはり自らやってみるということしかないだろうという結論に至った。それで、手作りの資料を作ってみることにした。
 そうすると、原初とまではいかないが、文字がどのように生まれ、使われてきたのかについて、今まで以上に強い関心を抱くようになった。それは、あたかも語り芸がどのように生まれ、伝わってきたのかを辿るのに似ている。そうして、ホワイトボードの前で立ちながら2時間ほど行う言葉の遣り取りが、どこか口演めいてくるのを我ながら可笑しく感じる。だから、それが良い結果をもたらすかどうかはわからないが、自分なりのやり方を模索していくしかないだろう。
 さて、“かず”で思い出したことがあり、一度実践してみることにした。アラビア数字で表される大きな数字に区切りのコンマを打つ商習慣がある。ご存知の通り日本でも標準は3ケタだ。千なら1,000、百万なら1,000,000。表計算ソフトは勝手に打つ。しかし、“いっせん”はともかく“いちひゃくまん”と言うか。10,000を“じゅうせん”、100,000,000を“ひゃくせんせん”と言うのか。1,0000なら“いちまん”、1,0000,0000なら“いちおく”が瞬時に分かる。「効率」を金科玉条のように語る人間にしても、未だに3ケタ区切りから逃れられないのは、明治の欧化政策で簿記をそのまま導入したせいだろうが、これも“日本的な”解決法と言えるのかもしれない。
 だから、自ら作る資料だけには、あえて4ケタ毎にコンマを入れ万進で表すようにした。とりあえず、学習者は“みやじスタイル”として認めてくれたようだ。これで、少なくとも「12おく3,456まん7,890えん」のような面妖な表記に彼らは違和感を持ってくれるにちがいない。箱根土産だという「湯のたまご」は、そのお返しだったのだろうか。